【短編】少年と少女と美術館の龍
「さよなら、アーネル」


絞り出した声は夜風に流されて消えた。


遠くで『龍』の哭き声が響く。


ルーティエにはそれが別れの挨拶のように聞こえた。


手を下ろし、アーネルと龍の消えていった方を見つめる。


雲はやはり一点もなく、無垢な月明かりが世界を照らしている。


月明かりは夜闇を泳ぐアーネルと『龍』も照らしてくれてるだろう。


彼らの旅路が安寧なものであってほしい。


ルーティエは願う。


いつか彼らが無事に帰って来て。と。
< 23 / 27 >

この作品をシェア

pagetop