放課後の寝技特訓・熊田先輩の横四方固め
だいたいさ、“チョリソー”ってなんなんだよ。

昨日から急に“チョリソー”って単語が俺のまわりにあふれだしやがって。

16年間“チョリソー”なんて単語、聞いたこともないのに、昨日からどいつもこいつも“チョリソーチョリソー”言いやがる。

なんで急に“チョリソー”って単語があふれるようになったんだ?

湯槽につかり考え込む俺。

…!?

待てよ…、もしかしてこういうことか!?

そうだ!そうに違いない!

これはきっと…。


宇宙人の仕業だ!


あれだ、どっかに宇宙人がいてだな、見張ってるわけだよ。人類を。

でな、実験してるんだよ、人間ってのはどんな行動をする動物なのかって。
地球はね、ほら、宇宙人からしてみれば、巨大な虫カゴなんだ。
でね、地球を担当してる研究員の中にも、お調子者がいるわけ。
いるだろ、宇宙人にだってお調子者が。

まわりからは「あいつ適当だから超おもしれ〜よ。この前なんか間違い電話に1時間話し込んでさ、最後その相手と仲良くなっちゃって、飲みに行ってんの」なんて噂されてる、そうだな、名前を仮に“ブコビッチ三世”にしとくか。
そのお調子者のブコビッチ三世がな、言いだしたわけよ。

「主任、主任、なんか日本地区に柔道ばっかやってる、生後16年のパッとしないオスの“マイキー・バイオレッド”ってのがいるんですが、実験してみませんか?」
なんて切り出してな。

「あのパッとしないマイキー・バイオレッドのまわりに、ある日いきなり“チョリソー”って言葉があふれるように仕向けるわけですよ。親や教師や、つがいのメスが、ある日を境にマイキー・バイオレッドに“チョリソー”“チョリソー”って言いまくるんです。マイキー・バイオレッドは今まで聞いたこともない“チョリソー”って単語にびっくりして、なんか面白い行動を取り始めるはずっすよ」

主任は主任で、8本の手を叩きながら、
「ピギャー、さすがブコビッチ三世君、相変わらずアイデアマンだな。最近人類もたいして面白いことやってくれないからな、どれ、暇つぶしにその“マイキー・バイオレッド”とやらをからかって遊んでみるか。しかし本部には内緒だぞ、バレたら動物虐待でうるさく言われるからな、ピギャー!」

とか言っているに違いない。
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