Bizarre Witch~猟奇的な魔女~
お預けを言い渡された。


「私が言う記憶っていうのは、あなたが考えるそれとは性質が違うの。記憶とは生きていようが生きて居まいが関係ない。物質が持つ記憶のこと」


ごめんなさい。分かりません。


それが俺の正直な感想。


「例えばあなたが死ねば、あなたの脳に蓄えられてきたいわゆる記憶は消滅するわよね」


当たり前だ。死ぬんだから。だが縁起でもない例えだ。


「でもあなたの体を構成する物質は死なないでしょ?いずれあなたの骸は土に還り、また新たな物を構成する。たとえそれが植物だろうが、動物だろうが、はたまたトイレットペーパーだろうとね」


極論だ。俺が死んだらトイレットペーパーになるって?


それを想像して思わず声に出して笑ってしまった。


「ちょっと、笑わせないで下さいよ。想像しちゃったじゃないですか」


アメリアはただ表情も変えずに、お似合いよ、と言ってくれる。


「でも冗談ではないわ。それが事実」


「分かってます。分かってますけど、……面白くて」


俺は笑って狂った息を整えて、それで?とアメリアを促す。


「だから、この世の物質は過去、自らが構成していた物の記憶、まあ経験値みたいなものを持っているわけ。それで悪魔はその経験値を餌に生きていて、あなたが持ってる大量の経験値を狙ってるということ」


作り話にしてはまあまあだ。


「私達もね、悪魔が普段、微量の記憶しか持たない人間を食べるのは黙認してきたわ。しかし、あなたのような桁違いの記憶を持った人間を食べさせる訳にはいかないの。そうなれば悪魔は私達が手出しも出来ないような、正に化け物になってしまうから」


「うーん、はい。アメリアさんの言いたいことは分かりましたけど。すいません。やっぱり非現実的で信じられません」


そう正直に言う。


時刻は深夜1時。



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