ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
「ガンさんから聞いたんだ。マユコこの春転勤するから、今回の公演が終わったら劇団やめるらしいよって…」
「……」
「お前、今年は異動希望出してないって言ってなかったっけ…?」
「……」
私がうつむくと、
ウシオは私の腕をつかんだまま「なんで転勤なんかするんだよ?」と聞いてきた。
「そんな…、なんでって聞かれても…」
「やっぱ俺のせい…?」
「……」
私は答えに詰まった。
でも「そうだよ」なんて言えなくて、
「そんなことないよ…。何度も言ってるとおり、ウシオのことなんて、もうこれっぽっちも思ってないんだから…」
と、とっさに嘘をついた。
するとウシオは「そっか」とため息をついた。
「…そうとは知らずに悪かったな」
私から腕を放すと、彼はひとこと「勝手にしろよ」と言って、外へ出て行った。
「……」
私は遠ざかっていくウシオの背中を見ながら、
今度こそ完全に終わったと思った。