ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜

私はつい嘘をついた。




「でも、あれは脚本のトガキに従っただけで、どうしようもなかったんです…。だからあまり気にしないでくださいね…」




いいわけをしながら顔を上げると、サキさんは首を傾げていた。




「私、ウシオから今回の芝居の台本を見せてもらっていたんですけど、あんなトガキなんてどこにも書いてありませんでしたよ…?」




「あ…」




ごまかしきれないとわかったとたん、すーっと血の気が引いていくのを感じた。




「それが、作者の意向で今朝急に変更になったんです…」




今度は事実を話したのに、サキさんは「そうなんですか?」と疑わしそうに目を細めた。




「そうなんです…。ホントすみません…」




再び謝罪の言葉を述べると、




「…なんだ」




サキさんはため息をついて、近くにあった椅子に腰掛けた。
< 227 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop