ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
私はつい嘘をついた。
「でも、あれは脚本のトガキに従っただけで、どうしようもなかったんです…。だからあまり気にしないでくださいね…」
いいわけをしながら顔を上げると、サキさんは首を傾げていた。
「私、ウシオから今回の芝居の台本を見せてもらっていたんですけど、あんなトガキなんてどこにも書いてありませんでしたよ…?」
「あ…」
ごまかしきれないとわかったとたん、すーっと血の気が引いていくのを感じた。
「それが、作者の意向で今朝急に変更になったんです…」
今度は事実を話したのに、サキさんは「そうなんですか?」と疑わしそうに目を細めた。
「そうなんです…。ホントすみません…」
再び謝罪の言葉を述べると、
「…なんだ」
サキさんはため息をついて、近くにあった椅子に腰掛けた。