ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜
休憩時間にひとりロビーでお茶を飲んでいたら、
ウシオが声をかけてきた。
「マユコ」
「あ、ウシオ…。おつかれー」
考えてみれば、
それは旅行以来、彼と初めて交わす会話だった。
なんだかドキドキして、ウシオの目を直視できない。
私が目線を外すと、
ウシオは私の肩に手を置き言った。
「大丈夫か?」
「え…?」
ウシオを見上げると、彼は真顔だった。
「ほら、マユコさっきガンさんにいろいろ言われてただろ…?」
「あ…、うん…」
「けどガンさんは公演前はいつもああだからさ、あんま気にすんなよ…?」
「う…ん」
「プロンプって大変だと思うけど、みんなマユコのこと頼りにしてるわけだし、本番までにはみんなセリフ入れてくると思うから、あんま気負わず頑張れよ…?」
「うん…、ありがとね…」
私がうなずくと、
「よし…。じゃあ後半も頑張るか」
ウシオはそう言って、先に稽古場へと入って行った。