ILLICIT LOVE〜恋するタイミング〜

休憩時間にひとりロビーでお茶を飲んでいたら、


ウシオが声をかけてきた。




「マユコ」


「あ、ウシオ…。おつかれー」




考えてみれば、


それは旅行以来、彼と初めて交わす会話だった。



なんだかドキドキして、ウシオの目を直視できない。




私が目線を外すと、


ウシオは私の肩に手を置き言った。




「大丈夫か?」


「え…?」




ウシオを見上げると、彼は真顔だった。




「ほら、マユコさっきガンさんにいろいろ言われてただろ…?」


「あ…、うん…」


「けどガンさんは公演前はいつもああだからさ、あんま気にすんなよ…?」


「う…ん」


「プロンプって大変だと思うけど、みんなマユコのこと頼りにしてるわけだし、本番までにはみんなセリフ入れてくると思うから、あんま気負わず頑張れよ…?」


「うん…、ありがとね…」




私がうなずくと、




「よし…。じゃあ後半も頑張るか」




ウシオはそう言って、先に稽古場へと入って行った。
< 89 / 261 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop