涙は煌く虹の如く
第2章 再会
「ザッ……」 
再び通りに出た丈也。
(気持ち悪ぃ…!)
何に対してかはハッキリとしなかったが丈也は胸の辺りに不快感を感じていた。
「ケッ…!」
「ビシュッ!」
その気持ちを抑えられずに丈也は道端の石ころに当たった。
石は勢い良く道路上を転がっていった。

「フンッ…」
丈也は通りに立っている電信柱を背にしてしゃがみ込んだ。
『散歩に行く』と言ってはみたものの特に当てがあるわけではなかったのだ。
ただ、あの言い様のない空間にいたくない一心で外に出てしまった。
「………」
賢を一人置いてきたことに少しの申し訳なさを丈也は感じた。

「フゥ…」
ため息をつく丈也。
賢は、そして美久はどんな気持ちで日々を過ごしているのだろう…?
そんなことを考えているうちに何だか急に美久のことが気になってきた。
「ブンブンッ…!」
何で気になりだしたのか…?
自分の気持ちが全くわからずに丈也は数度頭を振った。

「スクッ…!」
突然立ち上がる丈也。
「ダダダッ…!」
そして、一目散に走り出した。
ある目的地へ向かって。

「タッタッタッタッ…!」
丈也はさっきと同じように走るのを止めなかった。
走り出した時に比べたら明らかにスピードは落ちていたが、それでもマラソンランナーみたいに走り続けていた。
「ハァッ、ハァッ…!」
息遣いも荒い。
「あぁ…!」
目指す場所が見えてきたようだ。
安堵の声が漏れた。
丈也の眼前に在ったのは森だった。
クヌギやナラといった広葉樹が林立していた。
ここはU島に唯一存在している森である。

とはいっても狭いU島のこと。
”森”と呼んでいるのは島民だけで、むしろ一般人がこの場所を見たら”林”と呼ぶだろう。
しかし、林を奥へ進んでいくと意外に大きな沼があり、不思議なことに完全な淡水なので島にいながらにして川魚やその他川の生物を愛でることができた。
何故かあまり大人たちが興味を示さないということも手伝ってこの林は島の子供たちの間で”秘密基地”的な場所になっていたのだ。
丈也がそのことを知っていたのは当然のことながら最後に島へ遊びに来た5年前に美久と賢に案内されたからである。


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