ハイスクールラブ
真奈美は高校三年生になる前の春休みの間に、中学時代の外国人好きの友人と『RAU』というクラブに何度か足を運んだ。
当然、二人とも未成年であり、通常はクラブに入ることは禁止されている。

二人とも、それぞれの姉の免許証を借りたが、服や化粧をばっちりキメ、いったおかげか、年齢確認をされることはなかった。

ブルーのライトと爆音、沢山の外国人達に陽気な大人たち。
真奈美はその雰囲気が好きだった。

もうすぐ学校が始まる。友人は親が海外旅行から帰ってくるから、もうここには来れないと思うと話していた。

知り合いは何人かできたが、真奈美は1人で行くのも気が引けると思っていたため、もうしばらく来ることはないだろうと考えていた。

その時1人の男の姿が目に入った。ソファに座って、男女入り混じった5、6人と話している。

(あれ・・・藤代先生じゃ・・・)

藤代紘季は真奈美の学年の数学を担当していたが、真奈美は紘季の授業を受けていなかった。
それでも女子生徒に人気のある紘季のことは良く知っていた。
あまり話す機会は無く、笑顔が可愛いなぁと遠くから眺めるだけだった。

(でも・・・なんか学校と雰囲気が違う気がする・・・)

真奈美はこっそり紘季の様子を伺った。
紘季はいつもよりずっと大人な表情で酒を飲み、タバコを吸い、横に座っている女の肩を抱いていた。

そこには『教師』ではない紘季がいた。
真奈美は目が離せず、じっと紘季を見つめる。
友人は知り合った外国人の男といちゃいちゃしている。
真奈美のことなど既に眼中に無い様子だった。

紘季は女の肩にまわしていた腕を解いたかと思うと、立ち上がり、ソファを離れてしまった。

(帰るのかな)

真奈美は手元のビールをぐいっと一気に飲み干して、紘季を追う。
話しかけるつもりはなかったが、見失いたくなかった。

紘季はトイレに行くつもりらしかった。
真奈美もこっそり後に続く。細い廊下を曲がった時だった。
紘季が壁に寄りかかってこちらを向いていた。

「!!」
< 3 / 74 >

この作品をシェア

pagetop