ハイスクールラブ
「そう・・・6月29日、ねえ・・・」
「ちほならどうする?」
真奈美は何かにすがる思いでちほに尋ねた。

「私?私なら・・・そうだなあ。まわりから聞くかな。まずは」
「まわり?」

ちほはうんと頷いてカフェラテを飲んだ。

「その、重田って人、力になってくれそうだし、まずはその人に相談する。何があって藤くんは『裏』と『表』を使いわけているのか聞かせて欲しいって」

真奈美はちほの提案に釘付けになった。重田に相談することなど思いもしなかったのである。そもそも重田にしてみたら紘季との仲の方が長く深いものであるはずだし、最近話すようになった自分の相談にのってくれると思えなかったのである。

「真奈美から話を聞いてる限りでしかわかんないけど、なんとなく・・・藤くんは待ってたんじゃないかな」
「待ってたって何を?」
「なんてゆーか、自分の核心に突っ込んでくる人をさ。拒絶は寂しさの裏返しって、よくある話じゃない」

ちほはそう言ったが、真奈美にはそうとは思えなかった。あれは明らかに真奈美を、いや、世の中全てを拒絶しているかのような目だった。

「とにかくさ、今ここであんたが元気なくしたって意味ないよ。時間がたって藤くんのことも忘れられんならいいよ。でもさ、真奈美は藤くんが何に苦しんでるのか知りたいんじゃないの?救ってあげたいんじゃないの?」

真奈美はちほの言葉に顔を上げた。

「中途半端に関わるならスッパリやめた方がいいし、やるならとことんやる。あれこれ考えずに突進して打開してくのがあんたのいいところだったはずだよ。うちらなんてお金も権力もなくて、若さだけが財産じゃん。パワー出してさ、藤くんに突進していきなよ」

真奈美はちほをじっと見つめた。その励ましは真奈美の折れた心を持ち上げるのに充分だった。

(藤くんとのこと、スッパリ諦めるなんてできない!・・・諦めたくない!)
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