ハイスクールラブ
年齢からいって、辻村くみこの兄なのだ。真奈美はくみこの言葉を思い出した。
『私にとっても紘季は全てだわ。でもあなたとはレベルが違う。桁が違うんじゃなくて、次元が違うのよ』
くみこと紘季は、辻村春人という男の死によって残酷なほど深く繋がっていたのだった。
高尾山のふもとの駐車場に車を止める。
二人とも車から降りなかった。
「最近、またひどくなってきた。まず、女遊びが半端じゃないし、ほとんど寝てない。こう言ったら悲しむかも知れないけど、君に出会ってから・・・」
そう言って口を噤んだ。それがいっそう真奈美の胸を締め付けた。
「真奈美ちゃんにひどいことをしたあの日・・・。君がつけてた香水あったろ?あれは春人が好きでつけてた香水。それで紘季は切れちゃったんだな、きっと」
押しつぶされた車内に、辻村春人の死体から漂う血と香水の匂いを延々と嗅ぎ続けた紘季を思って、真奈美は胸を押さえ涙した。
「私・・・私・・・」
「もちろん、君が悪いんじゃない。そんなことは紘季もわかってる。でも、あいつでもどうしようもないんだ。何をしていても、あいつの記憶は6月29日に引き戻されて、おかしくなっちまう」
重田は真奈美が泣き止むまで黙って待っていた。彼自身、気持ちを落ち着かせているようだった。
「あいつは自分が春人を殺したって思ってる。春人の代わりに良い先生になったはいいけど、結局余計に自分をがんじがらめにしただけだったんだなぁ。俺さあ・・・紘季のためにやれることはやってるつもりだよ。6月29日だけじゃない、何か嫌な予感がする時は必ず一緒にいる。でもね、やっぱり危なくて気が気じゃない。誰かあいつを救ってくれ!・・・って、いつも思ってるんだよ・・・」
重田は最後は呟くように言った。本当に紘季を思っていることがひしひしと伝わってくる。
真奈美は紘季が寝言で『ハル』と口にしていたことや、教師なんて、なりたくてなったわけじゃないと言っていたことを思い出していた。
「しげちゃん、ありがとう・・・話してくれて」
真奈美は涙を拭いて顔を上げて重田を見つめた。
重田は泣きそうな顔でむりやり笑顔を作った。
『私にとっても紘季は全てだわ。でもあなたとはレベルが違う。桁が違うんじゃなくて、次元が違うのよ』
くみこと紘季は、辻村春人という男の死によって残酷なほど深く繋がっていたのだった。
高尾山のふもとの駐車場に車を止める。
二人とも車から降りなかった。
「最近、またひどくなってきた。まず、女遊びが半端じゃないし、ほとんど寝てない。こう言ったら悲しむかも知れないけど、君に出会ってから・・・」
そう言って口を噤んだ。それがいっそう真奈美の胸を締め付けた。
「真奈美ちゃんにひどいことをしたあの日・・・。君がつけてた香水あったろ?あれは春人が好きでつけてた香水。それで紘季は切れちゃったんだな、きっと」
押しつぶされた車内に、辻村春人の死体から漂う血と香水の匂いを延々と嗅ぎ続けた紘季を思って、真奈美は胸を押さえ涙した。
「私・・・私・・・」
「もちろん、君が悪いんじゃない。そんなことは紘季もわかってる。でも、あいつでもどうしようもないんだ。何をしていても、あいつの記憶は6月29日に引き戻されて、おかしくなっちまう」
重田は真奈美が泣き止むまで黙って待っていた。彼自身、気持ちを落ち着かせているようだった。
「あいつは自分が春人を殺したって思ってる。春人の代わりに良い先生になったはいいけど、結局余計に自分をがんじがらめにしただけだったんだなぁ。俺さあ・・・紘季のためにやれることはやってるつもりだよ。6月29日だけじゃない、何か嫌な予感がする時は必ず一緒にいる。でもね、やっぱり危なくて気が気じゃない。誰かあいつを救ってくれ!・・・って、いつも思ってるんだよ・・・」
重田は最後は呟くように言った。本当に紘季を思っていることがひしひしと伝わってくる。
真奈美は紘季が寝言で『ハル』と口にしていたことや、教師なんて、なりたくてなったわけじゃないと言っていたことを思い出していた。
「しげちゃん、ありがとう・・・話してくれて」
真奈美は涙を拭いて顔を上げて重田を見つめた。
重田は泣きそうな顔でむりやり笑顔を作った。