ハイスクールラブ
女子生徒に他の先生への連絡をお願いして、紘季は真奈美と病院に向かった。
二人ともハンカチもタオルも持っていなかったので、紘季が二枚重ねで着ていた上の方のTシャツを脱いで真奈美の頭にあてた。

「汚れるよ」
「そんなこと気にしてる場合じゃないだろ」

紘季が右手で真奈美の肩を抱き、左手で頭を押さえる。
力強い腕に包まれて、真奈美は妙に落ち着いた気分だった。
先ほどのくみことのやり取りで、張り詰めていたものが一気に解けていく気がした。

病院は混んでいたが、緊急で見てもらった。
深くは無いが、長く切れていて血がたくさん出たようだった。
縫う程ではなく、処置をしてもらったら痛みも和らいだ。

真奈美の頭が包帯でぐるぐる巻きになる。
紘季は少しホッとして、家まで送ると言って、再びタクシーに二人で乗り込んだ。
学校に電話し、連絡をし終わると真奈美を覗き込んで尋ねた。

「痛むか?」
「ううん。大丈夫」
「・・・ごめん」

紘季が突然謝ったので、真奈美は驚いて少し笑ってしまった。

「なんで藤くんが謝るの?」
真奈美はくみこにやられたとは言わなかったが、紘季には大体予想がついているようだった。

「いや・・・この前のこと・・・」

紘季は『RAU』で真奈美にしたことを謝っているのだった。

真奈美は胸を熱くした。
紘季は悪くない。悪いのは自分だ。何も知らずに人の心に土足で入り込もうとしたのだから。それはくみこに対しても同じである。

それにも関わらず謝ってくる紘季に申し訳ない気持ちでいっぱいになり、真奈美は泣きそうになった。

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