ハイスクールラブ
「とにかく、こんなことはもうやめるんだ。次同じようなことがあったらご家族や学校に連絡する。今日は大人しく帰りなさい」
「パパ!今してよ!」

くみこが父にすがりついた。
くみこの父はくみこの肩を抱いて言った。

「今日はそんな時間はない。さあ、行くよ」

良く見ればくみこも、質の良いワンピースを着て、ハイヒールを履いていた。どこかへ行く予定だったらしい。

くみこは真奈美を睨みつけ、母親を振り返ると声を上げた。

「ママ!早く家に入って!家に入れたりなんかしないでよ!!」

そう言うと、父親とともに車に乗り込み、出かけていった。
くみこの母は困惑した表情で真奈美を見つめていたが、何も言わずに家の中に入っていった。



真奈美はふーっとため息をついた。
そう簡単には聞かせてもらえないとわかっていた。こんなことで諦めるつもりはなかった。

真奈美は辻村の一家を目にして、あることに気がついた。

紘季のためだけではなく、純粋に辻村春人という人物を知りたいと思い始めていた。
紘季や家族たちがこんなにも苦しんでいるのは、春人の人望が厚かったからに他ならない。
春人が生きて、この世に存在していたのだと感じたい・・・。
なぜか真奈美はそう思うのだった。

真奈美は炎天下の中、いつ帰るかもわからないくみこを待つことにした。
今の自分には根性しかない。それを認めてもらうまでは帰らない。

そう心に決めていたが、やはり真夏の日差しの中で立ち続けるのは辛かった。
汗が傷口にしみる。だらだらと体中、汗が吹き出る。
頭がぼーっとしてきた。

(ちょっと・・・ヤバイかも・・・)

頭がズキズキする。目線の端がパチパチと星が瞬くように光る。
門にガシャンと手を突いた時だった。キーン!と耳鳴りがして、視界が真っ白になり、ガクッ!と膝が折れた。

「大丈夫!?」

くみこの母が真奈美に駆け寄った。
真奈美は何か言おうとしても言葉が出てこず、わずかに首を動かして頷くことしかできない。
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