僕の中の十字架


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2LDKロフト付きのデザイナーズマンション、という独身には可哀想な位に豪華なマンションの一室の玄関に、勝手に進入する男女ありけり。


赤の他人の家です。
不法侵入です。
まあ警察には魔法の手帳があるから無問題。


いや問題はあるがね。

なんてやつらだ。
ろくでなしだ。
警察の風上にも置けないよ。
人間として鬼畜だよ。


―――もっと罵ってやって下さい。





白で統一されたお洒落な一室に、靴を脱いだ二人は入って行きました。


この時二人して足音がしないあたり、彼等が空き巣みたいに感じますよね。


玄関から廊下が三メートル程伸び、リビングと廊下を仕切るドアがありました。右にトイレのドア、左に脱衣所等。



「綺麗な部屋ですね。さすが税金で生活する公務員」


トイレの中を確認しながら言った富士原さんに、北村さんは



「私ら警察も公務員じゃねぇか」



痛いとこ突きますね。



「あら、洗濯してないわ。下着(黒)が――――……」


「どれどれ……」



「前髪抜くぞお前」



洗濯機を覗きこもうとする富士原さんの前髪を引っ張って止める北村さん。



「痛いです。っていうか何で前髪引っ張るんですか」



掴みやすい位に伸ばしてるからだろうが。

北村さんはもう少しで口に出そうでした。
が、多分「ん?さぁ」と返されるので諦めました。

そして今度ヘアピンをやろう、と決心しました。




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