僕の中の十字架

サエの母親は、外面は娘にも他の子にも優しい人だ。


飽くまで外面だ。
一瞬でも他人が目をそらしたらサエに当たる。

八つ当たりだったり、無性に腹立たしかったり。



――自分は悪くない、横で見てたのに気付かなかったこの子が悪いのよ。


――自分は悪くない、この子が要領わるいからつねるのよ。


――自分は悪くない、普通の人間にすら成れないこの子が悪いのよ。


――人間として接するだけ無駄。


――ワタシのおかげで生きてるくせに。





< 82 / 133 >

この作品をシェア

pagetop