HAPPY DAYS
外に出ると夕焼けが街一面を朱に染めていた。


毅くんのおでこも私の頬も、みんな朱色。


それを少し感謝しながら夕日を眺めた。


毅くんは太陽に顔を向けて、感慨深げにじっと見詰めていた。


「ボク…」

毅くんが私に向き直った。

「髪黒くしようかな」

余りに唐突な問い掛けにびっくり。

「瀧澤、どう思う?」


「今の方が毅くんらしい、かも」


「ボクも考えるところがあって、全部フラットにしたくなった」


「考えるって?」

こんな話を私にするなんて、毅くん、私、勘違いしちゃうよ。


「う〜ん…純が髪を染めてないのが意外で、今は純らしいと思える、みたいなの分かる?ボクがボク色を見つけるまで、無意味に攻撃的な髪は止める」


「理由は毅くんらしいね」


「それだけで充分でしょ」


毅くんは大きく伸びをすると、私に手を振った。


「じゃあ、今から行ってきます。まだ明るいし、瀧澤一人で帰れるだろ」


もうちょっと毅くんといたい。


電話を切りたくなかったあの時の様に、私は毅くんを引き止めた。


私が毅くんの手を握った為、毅くんが戸惑っているのがよく分かる。


毅くんは背を向けようとしたことも忘れて、私の顔をポカンと眺めている。


こんな毅くんの顔は初めて。


「どうした?瀧澤?」


「…も切る」


「?」


「私も髪を切る」


「え?」


「なんか、変わりたいの、変わるきっかけが欲しいの」


「…よく考えたら?伸ばすの大変なんでしょ?」


「ううん、考えたら変われない。…変わりたいの」


毅くんは私の手を握り返して、もう片方の手でポンポンと叩いた。


気持ちは分かってるけど、止めとけ、みたいなジェスチャー。


手を離して歩き出した毅くんの後ろを追い掛ける。







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