HAPPY DAYS
美容室の並んだ椅子の前に並んだ鏡、その鏡に並んで写っているの毅くんと私。


毅くんは平然として銀紙で髪を挟んでいるのに、隣で鏡に写った私は、口をヘの字にして泣きそうな顔。


「どうしますか?」


すごく感じはいいけど、かなり困ってる店員さん。


そりゃそうだ。


私、椅子に座ってもどんな髪型にも決められず、泣くのを我慢している状態。


店員さんはいたわるように


「どうします?髪、揃える程度にします?」


と聞いてくれてるのを、私は泣くのを我慢するのに精一杯で
ただ黙っていた。


「瀧澤、大概にしなさい。迷惑でしょ」


入店して1時間、とうとう毅くんが口を開けた。


「すみません、この子の髪、ブロウして下さい」


「はい」


店員さんはホッとして洗った髪を乾かし始めた。


「すごく綺麗に手入れなさってますね」


「でしょ?なんか急に意地張って髪切るって、出来る訳無いよね?」

毅くんも店員さんに負けないくらいホッとしたのか、急に饒舌になった。


「喧嘩でもなさったんですか?」


鏡越しに毅くんと目が合った。
私の頬がどんどん赤くなる。もう夕焼けは終わったのに。


「喧嘩なんてしてないですよ」


「仲良しカップルなんですね」


店員さんはニコニコと続けた。


「彼女はもうちょっとあなたといたかっただけかも知れませんね」


私、耳まで真っ赤。
鏡越しですら顔を見れない。
毅くん、早く否定して。


「ボク等、そう見えます?」


店員さんが頷く。


「…喧嘩はしたことないですよ」


と毅くんは言った。






どうして、付き合ってない、と言わないの?

私、ますます、勘違いしちゃうよ。





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