ジェンガたちの誤算

辻井陽太と立花友哉


そんなに大きいわけではないゲーセンでも、
彩紗と茉莉恵を見つけることがなかなかできず、
入り口近くにあるタバコの自販機の横から中を見回していた。

するとグレーのパーカーにジーンズ、
少し茶色い髪をした男の人がプリクラの中から出てこちらに向かってきた。

ポケットから財布を取り出しながら自販機の前まで来ると、
彼は私を見て一瞬振り返り、そのあと和らいだ表情で話しかけてきた。

「桃子ちゃん?」

目を逸らしていた私は再び彼を見上げ「え?」とだけ言った。

「いや、茉莉恵の友達でしょ?同じ制服だから、そうかなって」

彼は自販機に千円札を入れながら言った。

私がどうしていいかわからずに黙っていると、

「あ!ももんが!」

と聞こえ、声の方向に目を戻すと、
今しがた彼が出てきたプリクラの中から茉莉恵が出てきて叫んでいた。
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