「私」にはなかった「モノ」【実話】
「アユミ?いる?」

「あ、メグミさんじゃないですか。どうし…」



一瞬眩暈がした。
いや、椅子から立ち上がった時だったから立ちくらみだ。

教室の扉のところまで行って、[お友達ごっこ]のメンバーメグミと話をする。
そこにもう一人のメンバーヒトミがきて、趣味の話をしていた。

どうしたものか、頭痛と吐き気が酷い。

さっきまではなんともなかったのだけど…
まぁ一時的なものだろうと思った。
我慢してメグミ達と話しをしていたが、段々酷くなるばかりだ。

すると、休み時間も終わりに近づき、5分前の鐘がなった。



「あ、そろそろ戻るねぇ~」

「ん~じゃあ後でね。」



メグミとヒトミが笑顔で手を振った。
それに手を振りかえそうとした時だった。

近くのトイレに行こうと思った。
吐き気が本当に辛かったから。

それは叶わなかった。

目の前が次第に、だが確実なスピードで真っ暗になった。
気づいたときには足の力を失って、その場に座り込んでしまった。

異変に気づいたメグミが駆け寄ってきた。



「ちょっと!アユミ!ねぇ!ヒトミちゃん!先生呼んで来て!」



メグミの大きな声に、周りが気づき始めたようだ。

そんなに大事にされても…
あまり目立つ事はしたくなかった。



「大丈夫!?顔…真っ青だよ!アユミ!アユミ!」

「だい…じょ…ぶ…」

「どうしたの?アユ?」



よっちゃんの声だった。

どうやら移動教室だったらしく、たまたま通りかかったらしい。

真っ暗だった視界はなんとか拓けたが、眩暈が酷く、立てなかった。



「あ、先輩!アユミが倒れちゃって…」

「えぇ~?まぁいいや。アユ~持ち上げるよ?大丈夫~?保健室行くからね?」

「ん…」



よっちゃんは力持ちだ。
身長は私の方が1、2cm高いが軽々と持ち上げてしまう。
その上結構長距離でも運んでしまうのだ。
よっちゃんになら安心して身を任せられる。

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