「私」にはなかった「モノ」【実話】
保健室につくと、若い保険医がいた。
慌てたメグミが保険医に事情を説明して、よっちゃんがベッドまで運んでくれた。



「先生~多分貧血じゃないかなぁ?コイツ昔から体弱いからさ~」

「うぅ~んそうみたいだね。アユミちゃん、話せる?」

「はい…も、大丈夫です。」

「うぅん、でもね、今日は一回お家帰りましょ?お家の人いるかなぁ?」

「おかんがいるかもしんないけど…でかけてんじゃないかなぁ?おとんとミワは仕事だし…」



よっちゃんが代わりに答えてくれた。

よっちゃんの上の姉、ミワ。

ちょっとだけ私やよっちゃんより大きいので、一緒に並んでるとよく男に間違えられる。
胸もないんだ。



「そっかぁ…じゃあヨシミちゃん一緒に帰ってもらえる?担任の先生には言っておくから。」

「お、やった~ラッキー。アユ、お前が落ち着いたら帰るから、荷物勝手に持ってくるよ?」

「うん。宜しく。悪いね。」

「帰ったらゲームやろ~」



よっちゃんは機嫌よく保健室を出て行った。

保険医は一応…と家に連絡してみたが、やはり親はいないらしい。
祖母が出たそうだ。

メグミがこちらを見てボーっとしている。



「どうした、メグミさんよ。」

「えっ!?いやぁアユミにもこんな事があるんだなぁ~と思って。」

「失敬な。私だって体調悪い事くらいあるんだい!それに授業はどうした?メグミさんはなんともないだろうが。」

「だってもうはじまっちゃったも~ん。次は行くよ。」

「このサボり魔め…あ、よっちゃんだ。」



保健室の扉をみてみると、そこにちょうどよっちゃんが来た時だった。
目が合ったとたんにやっと笑った。
よっちゃんはたまによくわからないところがある。



「アユ~もう平気?」

「うん、大丈夫。」

「荷物持ってやるよ。メグミちゃんもごめんねぇ~」

「いいんですよ先輩。サボれたし。」

「あはは!じゃあまたね。」

「お大事に~」
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