【束縛―ソ・ク・バ・ク―】
たった30m位だったがずぶぬれになってしまった。
エレベーターに乗ると冷房が入っているのか異常に寒かった。

「もう少しだから。」
彼女は声は出さず、うなずいて腕を擦って震えていた。
Tシャツが雨に透けて薄い水色のブラジャーが見えた。

“この風邪をひきそうな事態に何を考えているんだ、僕は――。”



部屋に入るとすぐシャワーを浴びられるよう準備をした。
「シャワー浴びれば暖かくなるよ。」
彼女も素直にそれに従った。
僕はバスタオルと着替えを用意した。


彼女がシャワーから出てきた。
僕のTシャツとジャージの裾を捲って履く彼女にドキッとする。
続けて僕が入った。
熱い湯にホッとさせられ、彼女の水色のブラの事を思い出した。

僕の大きいTシャツをぶかぶかに着ている多恵子はセクシーだ。
2人ともシャワーを浴びたこのシチュエーションに、
次の展開を色々想像する。

“まずはコーヒーを入れて、
暑いのに試合に来てくれた事に感謝しなきゃ。
そして風邪の心配をしよう。
もしかしたらキスくらいはするかも。

・・・つーか、中学生か僕は。”



シャワーから出た僕に意外な展開が待っていた。
彼女はいなくなっていて、メモが残してあった。

《雨がやんだので帰ります。
サッカーの試合も勝ててよかったですね。
着替えありがとうございます。
貸してもらいます。

では明日会社で。》

僕はすぐに玄関を開けた。太陽が顔を出していた。



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