ハッピー・バレンタイン

…ダメだ、あたし。

勝てないと思った。
例えブラウニーがどんなに上手くできたって、何の取り柄もない平凡なあたしには彼女には敵わないと思った。

彼女みたいにあたしは勇太には似合わない。
分かってる。

滲んで来た涙を慌てて制服の袖で拭う。

(お似合い、じゃん)
気付かれないうちにあたしはゴミ箱を抱えたまま引き返した。

…惨めになるから、勇太の返事は聞かなかった。

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