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「…ごめん夢太、俺…頑張ってんだけど…っ」


炭酸飲料の入った紙コップを口にくわえてうつ向くチカに、一瞬言葉が出てこなかった。


「チカのせいじゃないよ、僕が二人の能力を上手く引き出せないから悪いんだ」

だから顔上げて…?そう言う僕にチカは泣きそうな顔をして僕の目を見つめてくる。







「…だって…夢太が壊れそうだっ…」


チカのその言葉に今度は僕が泣きそうになる。

溢れ出しそうになる涙をグッと堪えながら、どうしてそう思うの?とチカに聞き返した。


「…今の自分の顔見て見ろよ、特訓始める前よりヒデェ顔してるから。

夢太は何をそんなに焦ってる?

そしてそんなツラする程に何に怯えてるんだ…?」



見て直ぐに異変に気付くほど僕は酷い顔をしてるのか。

平静を装っていたつもりだったのに。


最低限それだけは絶対心がけていた事だったのに。


日に日に確かな感触で甦ってくる過去の自分。

そして訓練が行き詰まってしまった事で生まれた、ウチにこのまま帰れないんじゃないかと言う不安が面に出ていたなんて…



…僕はどれだけ…弱い人間なんだよ。


だからココは嫌いなんだ。


この白い牢獄は僕を下へ下へと引きずって行く。


早く何か言わないとチカが変に思う。


「…違うよ、そんなんじゃない。ただの…ホームシックだよ」

チカの言葉を否定するのは僕のくだらないプライドを守る為。


ここでは弱い自分を誰にも見せたくない。



多分無理矢理笑って見せた僕の顔はチカの目には物凄く滑稽に映ったと思う。



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