answerS
「そうか…出来ないか。少しの間とはいえ仲良く訓練をしていたから情が移って殺せないか」

勢いよく首を縦に振ろうとしたが、それは絶対的に不可能な事である事に気付いてしまった。


この人はためしてる。

「たかだか一人の子供を殺す事も出来ないような奴に用はない」

だから大事な家族の所にでも何処へでも帰ればいい。


暮羽さんの目は確かにそう言っていて。

前も後ろも出口を塞がれてしまった僕は激しい頭痛に教われ、胃から迫り上がってくる液体を吐き出しながら床に蹲った。


「以前のお前ならこれ位簡単な仕事だった筈だ。思い出せ、過去の自分を」


白く霞んで見える視界の中で、羽を撫でるように髪を触られたのがわかった。

遠い昔にこの人に頭を撫でられる事を夢見ていた頃もあったけど

今の僕はこれが夢であって欲しいと心の中で強く願っていた。


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