answerS
story2―ノイロー―







夢太が暮羽と話をつけに出ていってから数分もしない内にアレジの異変に気付いた。


アレジは出ていったのはついさっきだと言うのに、いつも夢太が本を読むのに調度いいと愛用している窓際の椅子に座って窓の外を見つめている。


心配で堪らないのは俺も同じだがアレジは夢太が帰るまでああしている気なんだろうか。

「おい」

俺がアレジに話かけるとアレジは視線を窓の外に固定したまま静かに返事をした。


「まさかお前…夢太が帰って来るまでそうしてるつもりじゃねぇだろうなぁ…」


まだ電車にすら乗ってねぇよ、とボヤく俺にアレジはわかってる、と気の無い返事を返してくる。


こんなアレジは久し振りに見る。


ヤキモキしたってどうしようも無いのでズボンのポケットから煙草を取りだし口に加えた。

緑色の毒々しい煙を数回吐き出すと落ち着いてきた。


アレジの様子がおかしいのも正直理由は理解出来る。


俺達は夢太を拾ってからのこの7年間、そりゃぁもういろんな事をこなしてきたからな。


夢太を今の状態…自分を素直に表に出させる為に俺達がしてきた苦労は半端じゃない。


近くでまたガキ共のナワバリ争いが始まったらしく煩くなってきた。

ガキがいきがりやがって。

パンパンと弾が飛び交う音に小さく舌打ちをするとアレジも耳障りに思ったのかソファで寛ぐ俺の隣にドサッと腰を降ろした。

そんなアレジを目で追っているとアレジが口を開いた。


「なぁ…ノイロー」

アレジの声が余りにも弱々しくて驚く。

短く返事をして先を促す。


「これっきり…夢太が帰って来なかったらどうする…?」

不安で揺れる目が俺を静かに見つめた。


「…ふざけた事言ってんじゃねぇよ。夢太は俺と帰るって約束したんだよ…だから帰らない訳がねぇだろうが」

少し強めにそう言うとアレジは苦笑いした。

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