あなたが一番欲しかった言葉
ファミレスは、なかなか見つからない。

オフシーズンの海岸通りは、シャッターを下ろした店ばかりで、明かりといえばコンビニくらいのものだった。

信号待ちで止まり、右手に見える暗い海を窓越しに眺めた。

「真っ黒な空、真っ黒な海」

真梨子の言葉が蘇る。

この砂浜をゆっくり歩いて、星を見上げ、抱き合ったのが、たった数十分前の出来事とはとても思えなかった。

こんなにもお互い愛し合っているのに、どうしてうまくいかない?

ハンドルに乗せた手が、不意に熱を帯びた。
驚いて振り向くと、僕の手の上に、真梨子は手を置いていた。

「ヨシ君、あそこ」

そう言う視線の先を追うと、そこにはラブホテルの看板が、ネオンで光輝いていた。

「えっ?」

僕は意味が分からずに、真梨子の瞳を覗き込んだ。
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