あなたが一番欲しかった言葉
車に乗り込み、走り出してもまだ、何も話せずにいた。

何かを話そうと考えるのだけど、どうでもいい他愛の無いことしか浮かばず、結局口に出すことができなかった。

真梨子も同じように押し黙ったまま、じっとダッシュボードを見つめている。

こんなに近くにいるのに、手を伸ばせば届く場所にいるのに、抱きしめることができないなんて・・・。

真梨子は今、何を考えているのだろう。

どうして拒まれてしまったのだろう。

快楽のためだけに抱きたいわけじゃない。

それは真梨子にも分かっていると思っていたのだけれど。

この胸の内を、素直を打ち明けた方がいいのだろうか。


2人黙りあったまま、気まずい空気の中で、車を走らせるしかなかった。
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