あなたが一番欲しかった言葉
「ごめんごめん。
真梨子、行こう。大丈夫だよ。
たぶんね、僕の方が真梨子の何倍も緊張してると思うから」

ウィンカーを左に倒し、車をホテルの駐車場へと滑り込ませた。



そのホテルは不思議な作りをしていた。

2階建ての小さな家がたくさん並んでいるような景観。

1軒1軒が、離れのような個室になっていて、1階部分が駐車場、階段を上がって2階部分がワンルームの部屋になっていた。

部屋に入り、明かりも点けぬまま、僕らは抱き合った。

「ねえ、こうしてただ抱きしめるだけなのに、なんでこんなに幸せな気持ちになれるんだろう」

真梨子は「大好き!」と言いながら、僕の首に手を回してキスをした。
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