あなたが一番欲しかった言葉
「帰り、気をつけてね。家に着いたら電話して。あたし、起きて待ってるから」

なんていじらしいのだろう。

車から降りかけた真梨子の手を引き寄せて、もう一度キスをした。


「ずっと一緒にいよう。もうどこへも行かせない」

「どこへもって、ほんと?
トイレもお風呂も行っちゃだめなの?」

「だめだ。拉致して、両手足に鎖つけて、部屋に監禁するんだ。20年くらい」

「ばか。ねえ、もう一度」

僕らは笑いあいながら、3度目のキスを交わした。

車を発進させる。

ミラー越しに小さくなる真梨子は、いつもでも手を振り続けていた。
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