あなたが一番欲しかった言葉
「明日、バイト休みだろう?
僕も休みだから、夜、一緒に飲みにでも行かないか?」


「明日は・・・ごめん。イサム君と打ち合わせの約束がある」


「またかよ・・・最近、真梨子、そっけなくね?」


我慢できずに、つい愚痴をこぼした。


「ごめんね、ヨシ君には悪いと思ってる。
怒ってる?もしかして、あたしとイサム君との仲を勘ぐってるの?」

たしかにイサムと真梨子は、ここ最近頻繁に会っている。

もちろん男女の関係になるはずもなく、一緒に曲を作っているだけだ。
それは分かっている。分かっているけど・・・面白くない。


「やだなヨシ君、もしかして妬いてるの?」


「何言ってんだ、そんなんじゃない。ただ、最近なかなか会えないから」


「ほんとにごめん。来週になったら落ち着くと思うから、そうしたらゆっくりデートしましょう」


まるで母親が子供をあやすような言い方に、カチンとなる。

にもかかわらず、子供のように「うん」としか頷けない自分も惨めだった。

惚れた弱みなのだから、それもしかたない。
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