あなたが一番欲しかった言葉
最近の真梨子は、一緒にいても、どこか上の空だった。

ぼんやりと窓の外を眺めている時などは、確かめなくとも、曲に付ける詩を生み出しているのだろうと想像がついたので、できる限り話しかけないようにした。

「作詞の方は順調なの?」

こんなことで拗ねている自分が嫌で、寛大なところを見せようと聞きたくもない詞の作業を聞いてみたりする。


「難しいわ。作詞って文字数の制限があるじゃない。
限られたメロディの中に、いかに想いを込められるか。それが重要なのよね」


そんな話は、僕にとってはどうでもよかった。

ただ単純に、僕のことを考え、僕の話を夢中で聞いてくれる、以前の真梨子に戻って欲しかった。
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