あなたが一番欲しかった言葉
長い冬も終わろうとしていた。

テレビの天気予報では、早くも「桜の開花予報」を始めている。


春か・・・真梨子の関係に、再び春が訪れる日が来るのだろうか。

毎日の夜の電話が、週2、3回に減っていき、バイト先で顔を合わせても「すごくいい曲に仕上がったのよ!」と、話題のほとんどはイサムとの共同作業である曲作りに関することばかりだった。

以前はイサムと会う時は、事前に「行ってくる」の一言があったのに、僕の不満を知ってからは、何も告げず、隠れるようにして会っているようだった。

真梨子は言う。

「何も、やましい関係ではないのよ」と。

それは分かっている・・・分かってはいるけれど。
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