あなたが一番欲しかった言葉
「先ほど事故で運ばれた男女がいたと思うのですが」

焦る気持ちを抑えながら受付で叫んだ。

「えーと、ちょっとお待ちくださいね」

焦るこちらとは正反対で、若い男性職員はいたってのんびりと調べている。
いちいち慌てていては仕事にならないのは分かるが、それにしてもこっちの心境も考えて欲しい。

「あ、この方ですね。先ほど運ばれてきた2人の若い方。事故を起されたようですね」

「それは知ってます!2人は無事なんですか、無事じゃないんですか?」

まだ安否がはっきりしないというのに、真梨子の母親は目に涙を浮かべていた。

「細かいことは医師が説明に来ますので、そちらでお待ち下さい」



案内された長椅子に、女性の看護師がやってきた。

「ご親族の方でしょうか?」

「は、はい、藤木真梨子の母です。何があったんですか!?
む、娘はどんな状態なのでしょう!?」


「事故の詳しい状況は分かりませんが、対向車線をはみ出してきた車を避けようとして、車道の電柱に激突したようです」
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