あなたが一番欲しかった言葉
「ヨシ君・・・昔聞いたけど、話したら叶わなくなるからって、結局教えてくれなかったことがあるの。
覚えてるかしら」

「何を?」

「ヨシ君の夢の話」

ああ、そんなこともあった・・・

真梨子と2人、夜明けまで夢を語り合ったあの頃・・・郷愁が胸を締め付ける。

「ヨシ君の追っている夢って、なに?」

僕を見つめるまっすぐな真梨子の目。
僕は呟いた。

「僕の夢は・・・作家になること・・・。
書いては挫折して、書いては挫折して、未完の小説は数えきれないけれど、去年から書いているこの小説だけは、まもなく終わろうとしているんだ」

真梨子は、何度もうん、うんと相槌を打ちながら、話を真剣に聞いてくれた。
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