微熱
でもそんな気持ちも、佐倉くんが見えた途端にさーっと消えていった。

佐倉くんっていうのは学年で1番かっこいいって有名で、しかも絵を描くのが上手い。
彼の絵に、あたしは心を奪われた。
あんな風に絵を描ける人は、きっと佐倉くん以外にはいないと思う。

だから、彼が好きなんだ。
だからチョコレートケーキもユキみたいに素敵なものを作りたいんだ。

――彼の絵みたいに。


「ゆっユキ!」

「あー?」

「手、離してっ」

「は?……ああ、佐倉か」

「いいから早く!」

見られちゃうでしょ!と騒ぐあたしを無視して、ユキは手をぎゅうっと握ってきた。
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