微熱
「いやだって言ったら?」


一瞬、ユキがユキじゃなくなったみたい。
あの優しくて太陽みたいな笑みじゃなくて、冷たく嘲笑うかのような笑み。


「ゆ、き……?」

「…うそだよ、んな顔すんなって」

「あ…うん…」

うそじゃないってわかっていたのに、あたしはそう呟くことしかできなかった。
聞くのが怖かった。
なんて弱いんだろう、あたし。

ユキはあたしの呟きを聞いてからすぐに手を離した。
触れていた温もりが離れていく。

寂しいと、思った。
この温もりを手放したくないとも思った。
でもユキは歩きだしている。

繋いだ手は、今はポケットの中。
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