音色
少し早く目覚めた、肌寒い月曜日の朝。
玄関の靴箱に手をかけると、自然にため息がもれる。
「お宅の息子さん、公務員試験、受かったんですってね」
お母さんの声が、なぜか弾んでいる。
「いいわねえ、このご時世に。お母様も安心でしょう?」
「ええ、おかげさまで。あの子ったらさっそく今日、友達と遊びに行っちゃったわ。ずっと勉強してたから」
近所のお兄さんの朗報が聞こえてくる。
昔から真面目で、勉強があまり苦にならない人だった。
それでも、夜に響くあたしのギターを聞いて『司沙ちゃん、上手に弾くね』と声をかけてくれたこともある。
きっと、誰からも好かれる人。
だからあたしも、顔を合わせたらおめでとうを言うつもりで、扉のノブを握った。