愛して欲しいなんて言わない(番外編)
俺の発言に
父親の目がつり上がった

太くて脂肪だらけの腕が上にいくと
俺の頬に痛みが走った

父親が俺を殴ったのだ

父親の意思に反すれば
暴力でかえってくるのは知っている

でも嫌なものは嫌だ

俺の人生

こんな小さな醜い男に
つぶされてたまるか

俺は歯を食いしばり
痛みをこらえると
きっと
父親をにらみ返した

「口応えは許さん」

「俺は誰とも結婚しない
あんたのいいなりにならない」

「なんて親不幸な息子だ
早苗の教育が悪かったんだな」

父親はぼそぼそと文句を言う
母親は悪くない

たいして強くもないのに
強さを自慢する父親を見ているのが
嫌なんだ

だから俺は
父親と同じ道には進まない

進みたいとも思わない

「クレア嬢との婚約は
お前が大学を卒業してから
あちらさんともよく話し合う予定だ

覚えておきなさい」

すぐに進めないってことは
婚約させたいのは父親だけで

ガバルドン伯爵にはその意思が
ないとみた

どうせ父親の独りよがりだ

俺は個室を出るとロビーに向かった
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