彼が彼女になった理由(ワケ)
上映時間まで後数分。
さっきまでガラガラだった席も、もうほとんど空いていない。

『ほらコレ。』

綾斗は私の頭にコンと冊子の角をぶつける。

『今から見るやつのパンフ。 夏波が好きそうだと思って。』

…優しいとこもあんじゃん。
少し綾斗を見直しながらパンフレットを開く。

パンフレットの写真には女の子1人と男の子2人。
映画によく有りがちな三角関係を描いたラブストーリー。
幼なじみの兄弟2人の間で揺れ動く女の子が主人公らしい。

『どっちだと思う?』
『え?』
『兄と弟。 主人公が選ぶのどっちだと思う?』

どっちと言われても…
こういう場合、パンフレットの名前の欄に先に書いてある方って決まってんのよね。

『兄の方かな。』
『ふーん、じゃあ俺は弟ね。』

「俺は」ってまさか…

『弟が選ばれたら作れよな。 チョコ。』

やっぱり。

『好きだね、賭け事…』

何でチョコにこだわるんだ?
甘いもの駄目なくせに。

去年だって人にあげて食べなかったじゃん。
確かに形はよくないし、味も微妙だったけどさ…

『俺も好きで賭けてるわけじゃないんだけどね?』

綾斗は少し寂しそうに笑うと、そう呟いた。

『それって…』

その意味を問おうとすると同時、会場の明かりはフッと消え暗闇に包まれた。

『始まるぞ。』

そう、映画が始まるのだ。
なんというタイミングの悪さ。
おかげで聞きそびれてしまったじゃないか…

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