彼が彼女になった理由(ワケ)
私は今、硬く冷たいアスファルトを睨んでいる。
灰色にラメがキラキラ…
なんだかよく見れば綺麗。

何でこんな暇な事をしているかって言うと。

『…やっと4時50分か。』

そう。
望に急(セ)かされたため綾斗より早く到着してしまったのだ。

まるで楽しみで仕方ないみたいじゃない…


駅前の広場にある時計台の時計の秒針がチッチッと動く。
地面に飽きたのち、それを見つめていた。
そんな私の肩に突然温かいものが乗る。

『悪い。 委員会の仕事が長引いて…』

振り向くとそこには息を切らした綾斗が。

『…走ってきたの?』
『そりゃ誘っといて遅れらんないでしょ。 耳いてーわホント。』

この寒い中走ってくるんだもん。
耳が痛くなって当たり前だよ…

『それより。 そんな早くくるなんて、よっぽど俺との映画楽しみにしてたんだな。』
『バ…ッ バッカじゃないの?!』

せっかく見直してやったのに。
本当、馬鹿なんだから。

『どうせ女の子全員に言ってんでしょ?』

乱れたマフラーを巻き直す綾斗に睨みをきかせて言う。
するとヘラッと笑顔で『わかった?』と返された。
ホント最低…

『もう知らない!』

馬鹿綾斗を放ってスタスタと先に映画館の中へ入る。
あまり混んでいない館内に不安を感じながら前例より少し後ろを選択し、ドスッと座った。

そんな私の頭を後から来た綾斗がポンポンと撫でていく。
その思いもよらない行動に顔を上げたら、ようやく綾斗と目が合った。

『嘘だよ。 夏波にしか言ってないし言わないよ。』

いつものおふざけ綾斗からは想像もつかない大人びた台詞。
綾斗はたまにこうして私を困らせる。

『別に… 関係ないし、そんなん…』
『関係ない言うなって。 悲しくなる。』

綾斗は私を揺さぶる天才。
小悪魔だ…

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