彼が彼女になった理由(ワケ)
『残念だなぁ… また今年も夏波と一緒に作りたかったのに。』

望は残念そうな顔を見せて言う。
私だっていつものように望と一緒に作れると思ってた。
今年は何を作ろうか。
もう何週間も前から話し合ったよね。

でも今年、バレンタインを迎えられるのは望だけ。
私にはただの2月14日。
土曜の休日でしかない。

学校が休みで良かった。
誰のチョコレートも見る事はないから。

『何お前。 今年はチョコ作んねーの?』

私の背後、やや上空から男の子の声がする。
この声は…

『…綾斗。』

やっぱり綾斗。
振り返った私の目には綾斗の人を小バカにするような笑顔が見えた。

『去年は配ってたんだろ? 義理を。』

綾斗は勝手に隣の席に座ると、望からチョコレートの本を取り上げた。

『今年はやんないんだ。 何気、楽しみだったんだけど。』

イヤミ?
それとも本音?
ほんっとワケわかんない奴。

『今年は義理も無しだよ。 お金ないもん。』

とりあえず深く突っ込まないよう、素っ気ないふりをしておく。
返事も相槌(アイヅチ)も要らないから、早く席に帰ってよ。

『んじゃさー…』

そんな私の想いとは裏腹に、綾斗は話を繋いでしまった。

『俺だけに作って。 義理でもいいから。』

しかも思わぬ方向へ。

『バッ… 何で私が?!』
『あんま甘くないのがいいなー。 何が作れる?』

って、私の話を聞いてよ!
綾斗らしいんだけどさぁ…

『作れないしッ 作らないよ!』

ページをパラパラとめくる綾斗から本を奪うと、取られないように机の奥に突っ込む。

そんな私を見て綾斗は軽く苦笑した。

『んじゃ賭けをしようか。』
『か、賭け?』
『チョコを賭けての真剣勝負。』

この男は一体何を言い出すのだろうか…
予測不能すぎて恐い。
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