彼が彼女になった理由(ワケ)
チョコを賭けての真剣勝負。

綾斗の暇つぶしか。
はたまた気まぐれか。
私が受けなければならない理由もよく解らない。

『ったく… 何を賭けるって言うのよ。』
『次に教室に入ってくる奴。 男か女か賭けようや。』

綾斗は目線を教室の扉に向けると得意げな笑みを見せた。

男か女か…
確率は半々。

『俺、男に賭ける。』
『ちょっと待って。』

次に男が入ってきたら私は綾斗にチョコを作らなくちゃいけない。
じゃあ、もし女が入ってきたら?

『綾斗が負けたら何かしてくれるの?』

綾斗は何をしてくれるのだろう。

『2月14日。 夏波の好きなもん何でも買ってやるよ。』
『え? ヴィトンの鞄も?』
『…予算は決めさせてもらうけどな。』

ごまかすように笑う綾斗。

…ケチ。
何でもって言ったくせに。

『んじゃ改めて始めよう。』
『うん…』

男か…
それとも女か…

期待?
不安?
まるで徒競走のスタートラインに立ったように心臓が脈打つ。

どれくらい扉を見つめていただろう。
あまりに見つめすぎて目が疲れてしまう程。

『きゃあッ!!』

と、その時だった。
扉の付近にいた女子生徒が悲鳴を上げ、それと同時に黒い塊が廊下から勢い任せに入ってきた。

あれは…

『鳥だ! 窓開けろ!』

男子生徒は教室の後ろにある掃除道具入れからホウキを出すと、窓際の男に指示をする。

あれはスズメだ。
きっと常に開いたままの昇降口から入り込んでしまったんだろう。

ホウキを握った男子生徒。
タイミングを合わせて窓を開け閉めした窓際の生徒。
皆の協力のもと、スズメは空へ帰っていった。

『…で。 今のはオスメスどっちなん?』

しばらくの沈黙を破り、綾斗はそう口にした。

男か女か。
確か賭けの最中だったか…

『…メス。』
『いや、オスだろ。 あの動きは。』

今となっては答えの出ない事を、私達はしばらく言い合った。

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