ヒサイチ

「遠慮しないで好きな物、頼んでいいんだぞ。そうだ、海老頼め。海老」

お好み焼きを見つめていた私に、ヒサイチは可笑しそうに話しかけた。


「海老?海老はお好み焼きの真ん中に大きいのが入っているから、それでいいよ」

「えっ、お前海老だけ取り出して食おうって言うんじゃないだろうな?」

「うん。取り出さないけど、真ん中食べるからいいよ」

「何言ってんだ。別に頼め、海老」

「いいよ、この海老で。海老の単品って高いみたいだし」

「駄目だ駄目。俺だってこの真ん中の海老の所が好きなんだから。そこだけ食おうなんてせこい奴だな」

< 144 / 181 >

この作品をシェア

pagetop