ヒサイチ
それほど自分を普通と思うのは、きっとその頃の私にとって、普通であることが世の中で一番大切なことだったのかもしれない。
いや、その頃だけでなく、つい最近まで私はそう信じて疑わなかった。
普通である事によって安心できる。
文也に対して幻想とも言えるほどの安心感を抱き充実していた日々を思うと、私の価値観が『普通』ということに偏っていたのだと、今になってみると分かる。
そんな私だから、過去に普通とは程遠いヒサイチを異端児と決め付けて、彼の姿を目で追っては、暗い嫌な気持ちになっていたのかもしれない。