ヒサイチ

水族館を出るとお昼はもうとうに過ぎていた。


ヒサイチは「腹減ったな」と私に同意を求めるように話しかけた。


私は朝から何も食べていないのにもかかわらず、全く空腹感はなかった。


失恋すると食に走る人もいるようだが、私は反対のタイプのようだ。


どちらかというと気を病んでげっそりしてしまうタイプだったようだ。


なるべく早く忘れてしまおうとか、それほどショックは受けていないとか思ってはいるが、やはり食欲は全くないというのは、精神が大打撃を受けてしまった証拠なのだろう。

< 75 / 181 >

この作品をシェア

pagetop