あかねいろ

目の前には…落ちてきそうな天の川。


『キレイ…』


夕陽の呟きと、立ち上る煙草の煙りと「だろ?」と言う大斗の笑い声。


『昔、喧嘩ばっかしてた頃、追っかけられてここの森にバイクごと突っ込んだんだ。身体中痛くってさ、やっと立ち上がったら、波の音が聞こえた。引き寄せられるみたいに奥に行ったらここに着いてさ…。海だなんて知らなくて…』



煙草の煙が闇に溶けていく…


『俺しか知らない秘密の場所』

大斗はポツリと言った。


えっ?!


横を向くと月に照らされた大斗の顔があった。

視線に気付いた彼が夕陽を見る。

急に見られて反射的に目線を外した彼女。


大斗はまた優しく笑った。


『俺の秘密に片桐さんを連れてきちゃったよ。』



小さく笑って、大きく息をついた…




『俺さ…虐待ってヤツされてたの。』





『えっ?!』


神崎君…??


『いつからだったか、思い出せないくらいちっちゃい頃から?父親がどうしようもなくて、酒呑みで、母親は夜働いて…家に父親と2人きり。何度も死にかけた。小6年のある日、ついにガツッと刺されちゃって、マジでヤベェって思って家から逃げたんだ。良く覚えてない。気付いたら病院だった。』



静かに…ゆっくり大斗は話し出した。



夕陽はまた大斗の顔を見る。


いつの間にか空を見上げている彼…



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