魔王さま100分の1
「ああ、これをそのまま持って帰っても数日は大丈夫だよ。もっともたせたいなら生で買って、自分で焼くか蒸すかするといい」

欲しいなら生でも分けるよと、女将は言った。
それでは帰り際にとシルキスは答えて、さらに尋ねる。

「で、これを作っているところですが」

「この先をずっといったところにある果樹園だよ。うちもこれで一旗あげようと出資してる」

「この都市で果樹園ですか……」

よくコストがあいますね?
シルキスは言外で訊く。

発展した都市の土地は貴重。

商売の利権が上乗せされるこの都市ならなおさら。

いくら中心から離れているとはいえ、安くはないはず。

開拓民でもあるシルキスは、土地の価値に対しては敏感だ。
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