だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
なのに、パパはそんな皮肉に気づくはずも無く

「都ちゃんは偉いねぇ」

なあんて言って、無遠慮にわたしの頭をぐしゃぐしゃと撫でた。

それから、ようやく気づいたかのように、二人を黙って見守ってくれていたお兄ちゃんに視線を移す。

これ、普通のうちの組の人間には出来ない行為よ。

だって、お兄ちゃんは次期総長でとっても偉くて、皆に一目置かれているんだから。

……って、別にだから?って感じなんだけどさ。

「大雅くん、おめでとう」

お兄ちゃんのことを組員で次期総長なんて呼ばないのもパパくらいのもん。
それは、パパのこの組内での実質の地位がナンバーツーだからなのか。
それとも、単に彼の無遠慮な性格の賜物なのか。

わたしにはよくは分からない。

「おめでとうございます、紫馬さん。
研修、いかがでしたか?」

「ああ、お陰でいろいろ勉強になったよ。
子供を産むときも、あの時と同じくらい色っぽい声を出すんだねぇ、女性って☆
思わず出産直後の女性を襲いたくなるよね、これも本能?」

「……ほかに感想はないんですか?」

パパが言っていることはわたしにはいまいち理解できない。
でも、お兄ちゃんが少しだけ疲れた顔で頭を抱えた。
あ、いつかの清水と同じだ!

なんてことを、わたしはぼんやりと思っていた。
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