だって好きなんだもん!(Melty Kiss バレンタインver.)
「そ、あの子達」

言うと、ぽんっと肩を叩き手を放した。

「先生はどっちでも構わないんだけどね。
君たちが来てくれないと、あの子達がどうなっちゃうかは責任持てないなぁ」

普段、教室で使うのと全く同じ声音で、明らかにわたし達を脅迫していた。
わたしは隣の谷田を見習って、目を伏せる。

『身の丈以上の自信』を見せるのは禁物だってパパが言ってたじゃない。
だから、危険な世界なんて見たことも聞いたこともないような子供を装うことを決心したの。

「行きます」

思いがけず声が震えていたのは、芝居のせいではなく、子供らしく装えているかどうかが不安だったから。

「僕も、行きます」

続けて言った陸の声が、凛としていたのに驚いた。
直後、ぎゅっと手を握られる。

その手は、じっとりと汗ばんでいて、さっきのが精一杯の強がりだったんだとすぐに判ったが、わたしは笑顔を向けてあげることしか出来なかった。

しかも、かなり強張った笑顔。

「やっぱり二人は付き合ってるんだね」

見当外れの台詞に、答える気にもならない。

「で、何処にいったら逢えるんですか?」

「何でもないフリで、二人して先生の車に乗り込んでくれれば、すぐに会えるよ」

あの角を曲がるとコンビニがあるよ、と道案内でもするような気軽な口調で説明してくれた。

……この、ロクデナシ。

わたしは、心の中だけでぽつりとそう呟いた。
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