陽だまり
1章 おとうと

優喜

「やっと終わったー」

春、四月も終わりかけの教室で、わたしは一日が終わったことに安堵して机の上につっぷした。

授業が始まったばかりだというのに、わたしの頭は既に自分の能力の限界を超えていた。

だって、授業がむずかしすぎる。

高校の勉強って、こんなにいきなり難しくなるのかな。
それもと、学校の選択が間違った?

わたし、水城陽菜は、家から一番近いという理由で今の女子高を選んだ。
ちょっとレベルが高いなとは思ったが、遠くまで通えない事情があったため、仕方がなかったのだ。

でも、今ではそれを後悔している。
あと三年、ここで過ごすことを考えたら、わたしの気持は滅入りそうだった。


「ひーな。大丈夫?」

わたしの机までやってきたのは、親友の涼子。

この学校を選んで唯一よかったと言える点は、この涼子が同じクラスだったということだけだ。

涼子は小学校からの幼馴染で、一番の仲良し。
涼子がいるだけで、気持ちが明るくなれる。

「りょーこちゃーん。だめー。授業わかんなーい」

「ちょっとー。今からそんな事言ってんの?」

涼子は、昔から頭がよかった。
しかも美人。
早くも頭角を現して、学級委員に選ばれたくらい、なんだか違う雰囲気をまとっている。


「ねーねー、すごいかっこいい子が校門にいるよ!」

そのとき、一人のクラスメイトが教室に駆け込んできた。

「中学生っぽいんだけど、めっちゃかっこいい! 見に行こうよ」

教室が、とたんにあわただしくなった。

「へー。ねえ、ひな。わたしたちも行ってみよう」

「えー」

わたしは興味がない。

「いいじゃない。帰りついで。早く支度して」

「はーい」

わたしはしぶしぶ、起き上った。



< 2 / 14 >

この作品をシェア

pagetop