透明図
透明図
みんなの頭の上に不思議な設計図が見えるようになったのは、記憶にないほど小さな頃。
ある日突然にそうなったのではなく、少しずつだった。
最初はぼんやり靄みたいにみえていたものが、丸く、四角く、次第に実態をもっていった。
最初はみんな同じように思えたそれだけど、よくよく見てみれば一つずつが色をもち、匂いを放ち、みるほどに鮮やかだった。
いつか耳を澄ましていれば、音も聞こえるのかなと思ったけれど、誰かの心の声が聞こえるようになるのは少し怖かったし、何よりも騒がしくて夜に眠れなくなるのはもっといやだと思った。
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